「チャイナ・ナイン」

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中国で生まれ育って、今なお中国高官に太いパイプを持つ著者が書く、中国の実情。
実はこの本は現在の政権交代(習金平政権)の前に書かれた本ですが、結構良く書かれてる。
知りたかったこととしては、最近の経済的台頭から色々と強攻策に出ることが多くなっている中国ですが、彼らの中枢自体は頭が非常にいいと思っていて。(韓国政権などと比較して。当然日本より。)
その上で、とはいえ大国の上に一党独裁なので政治闘争からは逃れられないわけで、それらの、権力の争いと、実益の天秤をどうかけているのか、といったあたりを知りたかった。
結論から言うと、この本で書かれていることとしては、中国首脳は非常によく現状を見極められているとのこと。つまり、現在はネット文化の影響により大衆の思想教育が昔ほど簡単ではなく、そのコントロールが最も難しいこと。そのため最も怖がっていることは中国国民の政府に対する不満が爆発することであること。日本は単にバッシングしていればよいわけではなく、大衆コントロールとしてのガス抜きとして適度なレベルで、とはいえ経済活動に多大な影響を及ぼすとまずいのでそのあたりの駆け引きを続けていること。首脳の中で役割分担をしており、いわゆるアメとムチのような役柄を作り、均衡を調整していること。など。
また、政権の思想志向としては訒小平時代に大枠が作られており、その時代のレールがいまだ色濃く残っていて、つまり先富(自由経済化により、先に稼ぐやつが稼ぐ)と、その後の共富(社会主義的な考え方で、先に得た富を国民に分配する)という流れの途中であること。先富の象徴は江沢民であり、共富の象徴は胡錦濤であること。今回の政権派閥としては江沢民側が多数を占めるものの、それでは(政治腐敗も進むので)立ち行かないから方針を協調路線にするであろうこと、などが述べられている。
いくつか中国を論じた記事を見たりしているが、ここに書かれている知識を元に見ることで非常に背景が理解しやすくなる。良本。